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  眼精疲労と漢方薬

眼精疲労の診断と治療


   
眼と内臓
診断と治療
よく見られる眼精疲労
   
  肝気鬱血(ストレス)
  肝の働きがうっ滞する肝気鬱結が原因のときは、逍遥散や加味逍遥散

不満がたまったり、イライラが爆発するなどして、全身正常な活動を保つ肝の働きが滞ると、十分な精が眼に送られなって、眼球が脹ったように感じて眼が疲れやすくなり、ものがぼやけてはっきり見えなかったり、視力が低下するなどの眼精疲労の症状がおこります。体内で熱が生まれる場合を除くと、充血や涙、目やになどはみられず、痛みやかゆみもありませんが、風にあたると痛むことがあり、精神的なストレスが強くなるほど症状は強くなります。さらに、抑うつ感・両脇の脹り・頭のふらつき・口が苦い・吐き気・ゲップ・大便がスッキリ出ない・舌に薄い苔がつく・脈が弦などの症状をともないます。
このような「肝気鬱結」による眼精疲労は、滞った肝気をゆるやかにして肝の働きを回復する「逍遥散」や「加味逍遥散」で治療します。
  肝血虚(女性に多い)
  肝血が不足する肝血虚が原因の場合に効果的な四物湯

出産や月経過多、大病やけがなどによって血が必要以上に失われると、肝に蓄えられている血の必要量が不足します。この「肝血虚」の状態になると、眼に十分な精血が送られなくなり、眼の正常な働きが低下して、眼が疲れる・光がまぶしく感じる・視力減退・眼の乾燥感・ものがかすんでみえる・ものをじっとみつめると眉稜骨周辺が重だるくなる、といった症状が現れます。こうした症状は女性に多く、特に月経期に強くなります。さらに、肝血虚の状態が長びいて血の傷耗が進むと、気にのって全身をめぐっている血の収斂作用がおとろえます。そのため、気が上昇する「血虚生風」の状態になって、まばたきが多くなったり、眼がゴロゴロしてかゆくなるなどの症状も現れるようになります。このタイプの眼精疲労は、めまい・不眠・眼をよくみる・筋肉がピクピクする・爪につやがない・経血の量が減る・無月経と不規則な出血をくりかえす・舌が淡い色になって苔が少ない・脈が細いなどの症状をともないます。
治療は、血を補って肝の働きをととのえる「四物湯」で行います。
心肝血虚(不安感)
  心と血が不足する心肝血虚に適した人参養栄湯か天王補心丹と六味丸の合方

肝血虚が長びくと、母にあたる肝の病変が子にあたる心におよびます。この「心肝血虚」の状態では、肝血虚の症状に加え、心血が不足する心血虚による動悸・顔につやがない・眼に力がない・脈が細あるいは結といった症状と、心神が十分な栄養を得られないためにおこる、眼に輝きがない・不安感・不眠・物忘れ・気持ちが落ち着かない・悲しい気持ちになりやすいなどの症状がみられるようになります。
治療は、脾の働きを高めて心血を補い、精神を安定させる「人参養栄湯」か、心血や津液を補って精神を安定させる「天王補心丹」に、肝や腎の血や津液を補って熱を冷ます「六味丸」を合わせたもので行います。心血を補って精神を安定させ、熱を除いてイライラをしずめる「酸棗仁湯」に六味丸を合わせたものや、脾の働きをととのえ、心の働きを補って精神を安定させる「甘麦大棗湯」に、肝血を補いながら流れをととのえる四物湯の合方もいいでしょう。
  肝鬱血虚(ストレス
  肝気の滞りから肝血不足がおこる肝鬱血虚を治療する、加味逍遥散と四物湯の合方

肝気鬱結が長びくと、内臓の働きが低下して、必要な量の血を作れなくなったり、体内で生まれた熱が血を消耗し、さらに「肝鬱血虚」の状態に進むことがあります。
 肝血虚の症状に加えて、眼がかすんで脹る・頭のふらつき・胸脇が脹る・ゆううつ感などの症状が現れ、精神的なストレスがかかると、症状が強くなります。このタイプの眼精疲労には、肝の働きを高めて脾の働きを回復し、熱を冷ます「加味逍遥散」と、肝血を補いながら流れをととのえる「四物湯」を合わせたものが効果的です。
  肝腎陰虚(ぼやける)
  肝血と腎精が不足する肝腎陰虚には杞菊地黄丸か知柏地黄丸

肝と腎は、「肝腎同源」といわれるほど、とくに密接な関係にあります。そのため、肝血虚がつづくと、腎精も傷つけられて消耗されるようになります。反対に、慢性病や老化、節度のない性生活などが原因で腎精が消耗されると、肝の血や津液も不足するようになります。
 この「肝腎陰虚」の状態では、ものがぼやけてみえる・眼の異物感・眼のかゆみ・眼の充血・風にあたると熱い涙が流れ出る・光がまぶしく感じるといった眼精疲労の症状がはっきりと現れ、頭のふらつき・耳鳴り・難聴・腰やひざに力が入らず、だるく痛む・午後の発熱・ねあせ・手のひらや足の裏および胸中の熱感(「五心煩熱」)・舌が紅くなって苔が少なくなる・脈が細数などの症状をともないます。
治療は、肝腎の血と津液を補いながら眼の働きをととのえる「杞菊地黄丸」で行います。眼の強い充血など、熱症状が明らかなときは、熱を冷ます力の強い「知柏地黄丸」を選ぶといいでしょう。
  脾気虚(疲れる・食不振)
  脾の働きがおとろえる脾気虚に威力を発揮する、六君子湯

先天的な体質虚弱、節度のない食生活・慢性病・大病・心身の疲労などが原因で、食べ物を消化吸収する脾の働きが失調したり不足するようになると、気・血・津液の原料となる「水穀の精微」を眼に送れなくなります。
 その結果、眼がかすむ・ものをじっとみつづけると眼が疲れる・まぶたに力が入らないといった眼精疲労の症状がおこります。また、息切れ・話すのがおっくう・元気がない・舌が淡紅色になって薄く白い苔がつく・脈が虚といった症状も現れるようになります。

こうした「脾気虚」の状態で眼精疲労がおこるときは、脾の働きを補って元気を回復する「六君子湯」で治療を行います。
  中気下陥(脱肛・疲労)
  脾気虚が進んだ中気下陥を回復する補中益気湯

脾気虚が進むと、血や津液、精をからだの上や外に向けて動かしたり、内臓や器官を重力に負けないように支える気の力が低下して、下向きに働くようになってしまいます。
 こうした「中気下陥」の状態では、脾気虚の症状に加えて、まぶたに力が入らず、ひどいと上まぶたがたれ下がるといった眼精疲労の症状や、脱肛や子宮脱などの内臓下垂・全身の下墜感などの随伴症状も現れるようになります。
  脾陰虚(眼の乾燥)
  脾の津液が不足する脾陰虚に選ぶ、参苓白朮散

かぜの治療を誤って必要以上に発汗しすぎる・生まれつき津液が不足ぎみの体質・節度のない食生活などが原因となって、慢性的に脾の津液が不足することがあります。
 この「脾陰虚」の状態になると、眼の乾燥感・涙が出ない・ときに額が痛むなどの眼精疲労の症状が現れるようになり、のどが渇く・皮膚が乾燥してカサカサになる・爪のはえぎわが角質化して硬くなる・便秘・小便の色が濃くなって尿量が減る・舌が紅く苔が一部はがれて地図状になる・脈が細数といった症状をともなうようになります。
 また、脾気虚が長くつづくと、消化吸収力が慢性的におとろえた状態になる結果、津液も慢性的に不足するようになります。このような「脾気陰両虚」では、脾気虚による眼精疲労の症状に加えて、のどが渇くが水分は少ししか飲まない・大便がはじめは硬く、途中から下痢になるといった症状が現れるようになって、舌が淡紅色になって乾燥ぎみとなり、苔が少ない・脈が細緩の状態になります。
脾陰虚や脾気陰両虚によっておこる眼精疲労の治療には、「参苓白朮散」が適しています。脾の気や津液を補いながら津液の流れをととのえる効能があるからです。
  腎陽虚(老化)
  腎陽が不足する腎陰虚の治療には八味地黄丸や牛車腎気丸

腎の陽気(「腎陽」)は、腎精をもとにつくられ、体を温め養う熱エネルギーの源です。水分を温めて蒸気のようにつくりかえ、からだに必要な水分を肺を通じて全身に送りだすとともに、不要な水分を膀胱を通じて排泄し、全身の水分代謝を円滑にします。
 先天的な体質虚弱や慢性病、老化などが原因で、腎の働きがおとろえ、腎陽が慢性的に不足する「腎陽虚」の状態になると、水分を蒸化することができず、水がたまるようになります。これが眼底細胞や硝子体をうるおす体液にあたる「神水」や「神膏」の過剰や不足をひきおこすと、硝子体混濁や網膜剥離などの病気がおこります。また、高齢者によくみられる、冷たい涙が出やすかったり、涙が鼻に流れ込んで鼻水が出やすいという症状も、腎陽が慢性的に不足するためにおこります。
 腎陽虚によっておこる眼精疲労は、眼が疲れる・夜間になると暗く感じ、視力が低下する・ものがはっきりみえないといった症状としてあられます。また、はがれた細胞膜などが視野に入ると、黒い雲のようなものが浮いているようにみえ、斜めにみないと視野から除くことができなくなります。
 また、ふだんから寒がりで、手足が冷える・温かいものを好んで飲む・夜間の尿の回数が多い・頭のふらつき・めまい・腰やひざに力が入らず、だるくうずくように痛む・手足がむくむ・舌がはれぼったくなって色が淡白になる・脈が沈遅あるいは浮大で無力などの症状をともないます。
この場合は、からだを温めて陽気を補い、腎の働きを高めて水分代謝をととのえる「八味地黄丸」や「牛車腎気丸」などで治療するといいでしょう。
  心脾両虚(不眠
  脾気と心血が不足する心脾両虚には帰脾湯冷えるときは十全大補湯

脾気虚の状態が長びくと、心に必要な気や血も慢性的に不足するようになるため、心の働きもおとろえます。その結果、あれこれと思い悩んで疑い深くなり、疲れやすい・驚きやすい・不眠・頭がふらつく・物忘れ・動悸が強い・食欲不振・顔につやがない・舌の色が淡白になって薄く白い苔がつく・脈が細で無力といった、脾気と心気・心血の不足による症状が同時に現れるようになります。
 気・血が不足すれば精も不足し、眼に十分な栄養がいきわたらなくなるため、神光がおとろえて、眼が疲れやすくなって眼に輝きがなくなり、ものがぼやけてみえる・ものをじっとみつめると眼がだるく痛み、ひどくなると眼が膨張するように感じ、眉稜骨のあたりが痛む・光がまぶしく感じるといった眼精疲労の症状がおこるようになります。

こうした「心脾両虚」の眼精疲労には、脾の働きを補い、心の働きをととのえながら、気や血の流れをよくして内臓どうしの調和を回復する「帰脾湯」や「加味帰脾湯」、が人参養栄湯が効果的です。また、冷えの症状があるときは、からだを温める効果もある「十全大補湯」を選びます。
  失精(虚弱体質)
  若いのに精が不足する失精の人には桂枝加竜骨牡蠣湯

先天的に体質が虚弱で、脾の働きが弱い人は、十分な量の精をつくって補うことができません。したがって、気や血もふだんから不足気味です。精は不足しているものの、腎そのものはまだ衰えていない状態ですから、高齢者よりも、むしろ若い人に多い病態です。
 このような「失精」の状態にある人が、慢性的病をわずらったり誤った治療を受けると、全身を潤す水と、全身を温める火がともに不足するようになります。その結果、全身の水をコントロールする腎を適度に温める心と、全身の火をコントロールする火を水で適度に冷やす腎の働きが、協調関係を失ってしまいます。このような「心腎不交」の状態では、水の不足によって相対的に余った火が浮き上がると同時に、火の不足によって冷たい水があふれるという、二つの病態が絡み合った症状があらわれます。
 
眼が疲れる・目に輝きがない・物がぼやけて見える・視力減退といった眼の症状の他、不眠・驚きやすい・物忘れ・夢をよく見る・遺精などの心腎不交による症状。
火の不足によって余った冷たい水が引き起こす、腹部の動悸・陰部の冷え・頻尿と尿量減少・下腹部の筋肉のひきつりといった冷えの症状。
水の不足によって余った火が引き起こす頭のふらつき・脱毛・舌の色が淡白などの症状を伴うのが特徴です。

このような人に用いるのが、桂枝加竜骨牡蠣湯です。

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