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  膝の痛みと漢方薬

急性病


   
中医学からみたひざの痛み
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急性病
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中国の医療事情
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1 急におこりやすい 一時的なひざの痛みの診断と治療
  水分代謝の異常で急におこるひざの痛みは有害な水分を除いて治療する  からだの活動に必要な水分である津液は、消化と吸収を行う「脾胃」でつくられ、腎の働きをうけながら、「肺」によって全身に送られます。
 食生活の不摂生や過労、老化、慢性病などが原因で脾胃の働きが衰えると、肺の働きも衰えて、水分代謝が悪くなり、からだの中に、有害な水分である「水湿」が生まれます。水湿は、全身にはりめぐらされた通路である「三焦」に停滞し、からだの表面近くにたまります。このとき、雨にぬれたり、湿度の高い環境にさらされるなどが原因で風邪と湿邪が侵入すると、発熱や悪寒をともなって、ひざが急にはれて痛むことがあります。
 このような「風水」と呼ばれるひざの痛みは、中年以降だけでなく、比較的若い人にもおこります。
 上半身を中心とした全身のむくみのほか、ひざの関節に水がたまってしびれる・汗が出ない・尿の量が少なくなる・舌が淡い紅になって白い苔がつく・脈が「沈」などの症状をともないます。
 治療は、脾胃と肺の働きを補いながら、有害な水分を尿として除く「越婢加朮湯」で行います。

余分な水分が集まってひざの痛みをおこすときは、からだを温め利尿する
 脾胃や肺の働きの衰えが続き、余分な水分が集まると、発病因子である「水飲」となって、胃の中やみぞおちのあたりにたまります。
 このとき寒い風にあたると、水飲が急にからだの上や表面に向かって逆流し、通路である三焦に停滞するため、脾胃は皮膚の働きが妨げられて、ゼーゼーという呼吸音がしたり、咳が出るようになります。
 さらに水飲の力が強くなると、からだの下のほうにも流れて、全身が重だるく、むくむようになります。
 このような「寒飲」によってひざも痛むときは、寒け・咳・汗が出ない・のどが渇かない・舌の色が淡くなって白い苔がつく・脈が「浮弦」などの症状があらわれます。
 治療は、熱性の生薬でからだを温め、有害な水分を尿として除き、肺の働きを回復する「小青竜湯」で行います。

体内に有害な水分がたまり、冷えが侵入してひざが痛むときは、体内を温め表面の冷えを除きます。
 冷たいものや生ものの食べすぎや偏食が続くと、からだの中が冷え、脾胃の働きが停滞するため、有害な水分である水湿が生まれます。
 このとき、寒い風にあたるなどしてからだが冷えると、からだの表面と内蔵がともに冷えます。そのため肺や脾胃の働きがさらに妨げられて、水湿が増え、気や血の流れが滞るようになります。
 このような「内生寒湿・外感風寒」タイプのひざの痛みは、冷えるほどひざの痛みが強くなるのが特徴です。また、頭から肩にかけてのこわばった痛み・寒け・足の冷えが強い、あるいはからだの上が熱く下が冷える・腹部のうずくような痛み・嘔吐・舌が青紫色になって白い苔がつく・脈が「緊」あるいは弦で「遅」、といった症状をともないます。
 治療は、からだの表面を温めて冷えを除くとともに、脾胃を温めて働きを回復し、冷えや有害な水分を除いて気や血の流れを回復する「五積散」で行います。冷えによる症状が重いときは、温める力を強める炮附子末あるいは「桂枝加苓朮附湯」を合わせて使うといいでしょう。
有害な水分が下半身にたまり、ひざの痛みを悪化させるときは、気の働きを高めて除く
 冷たいものや生ものの食べすぎや偏食が続くと、からだの中が冷え、脾胃の働きが停滞するため、有害な水分である水湿が生まれます。
 このとき、雨にぬれたり、湿度の高い環境にさらされると、湿邪が体内の有害な水分にひきよせられるように侵入して、気の働きを妨げて滞らせ、湿邪の重い性質によって足に向かって流れるため、ひざが痛くなることがあります。
 このような「内生寒湿・外感風湿」によっておこるひざの痛みは、重だるく、湿度が高くなるほど強くなります。また、むくみ・悪寒・しびれ・汗が出ない・のどが渇かない・舌に白い苔がつく・脈が弦などの症状をともないます。
 治療は、主にからだの中を温めて冷えや有害な水分を除き、滞った気を破って気や血の流れを回復する「鶏鳴散」や、「九味檳榔湯」に呉茱萸と茯苓を加えたもので行います。

一時的なひざの痛みが長びいて安静時も痛んだり、ひざが変形するときは有害な水分を除く力の強い薬で治療する
 一時的なひざの痛みが長びき、冷えや有害な水分が除かれないまま長い時間がたってしまうと、湿邪の力は強くなり、からだの奥に入りこんで「湿毒」になります。湿毒が、筋膜や腱に栄養や潤いをあたえる血を傷つけ、流れを滞らせると、粘性の高い有害な水分である「痰」が生まれます。
 このような状態では、しびれをともなうひざの痛みが激しくなります。痛みが激しくなります。痛みは安静時にもおこるようになり、とくに夜間に強くなります。冷えも強く、靭帯がひきつったり、曲げのばしをしにくくなるほか、ひざの関節が変形したり、ひざに水がたまることもあり、脈が「細弦」になります。
 治療は、冷えや有害な水分を除きながら、血の滞りを解消して流れを回復し、痛みを止める「薏苡仁湯」で行います。

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