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不安神経症と漢方治療

やり場のない怒りが内臓の機能を失調させる

まず、鬱怒傷肝によって起こるこころの病いについて考えてみます。

 心因性の症状は、必ず心を中心に起こります。しかし、魂は肝に内蔵されているため、肝の機能失調はこころの病いを考えるうえで重要な位置をしめています。

 怒は肝の機能を失調させます。たとえば、心配ごとがあり、不快感や不満を解消できず、怒りをぶつけるところがないために、悶々とした状態が続いたり、激しい怒りを覚えると、肝の機能が失われます「肝失疏泄」。

 「疏泄」とは、流れや通りをよくするという意味です。肝は、全身の機能が順調に働くように、気や血、津液の流れを調節するとともに、精神情緒の調節を行っています。血流量を調節して、筋や腱をしなやかにし、脾の消化・吸収機能を調節することなども、肝の疏泄といいます。

機能の失調が長びくとほかの臓器にも影善がおよぶ

鬱怒傷肝タイプのこころの痛いは、肝の疏泄機能が失調した「気鬱」からはじまります。これが続くと気が滞り「気滞」血や津液の流れも滞って、疼痛や脹満が現れます(「血鬱」「痰鬱)。また、気滞が進むと、肝の機能が異常に亢進したり盛んになって、気が本来とは違う方向に働くようになります(「気逆」)。
 気逆のうち、体の上のほうに行く「上逆」では頭や顔の症状が起こり熱を帯びると症状が激しくなります。また、脾胃をおかす「横逆」では胃腸症状が起こります。さらに慢性化すると、血や精を消耗して心や腎を障害するようになります。
肝の疏泄機能が長い間滞ったり、激しい怒りにあうと、気が火(熱)となって、体の上部に昇ります (「火鬱」)。この火は血や津液、精を消耗するため、やがては肝腎陰虚の状態になります。