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不安神経症と漢方治療

こころの病いは三つに大別される

こころの病いは、まず心の機能失調をひき起こし、不安や不眠、動悸や健忘、心配しすぎ、夢をよく見るといった症状を現します。しかし、心は五臓すべてを統轄していますので、心が傷つけば、他の臓器にも影響が及びます。その為、五臓のいずれかの機能が失調します。したがって、心の病気としてではなく、高血圧や咽喉神経症、鬱血性疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、膀胱神経症など、臓腑機能の滞りや乱れとして認識されることが多いのです。特に失調しやすいのは、肝と脾の機能です。そしてこれらの病気が長びくと、必ず腎に波及します。
  こころの病いは、
①怒りによって肝の機能が滞って起こる実の症状「鬱怒傷肝」
②思い悩みすぎて脾の機能が失調したり、肝と脾の調和がくずれて起こる実の症状「思鬱傷脾」
③鬱怒傷肝や思鬱傷脾の状態が長びくか、あるいはもともと虚弱なために、心の活動に必要な気や血、津液などの栄養が不足し、心に内蔵される神の陰陽(塊と魂)の協調とバランスがくずれて起こる虚の症状「心失所養」の、三つのタイプに大別されます。
心失所養は、鬱怒傷肝や思鬱傷脾が進行して、臓腑の陰陽のバランスが失調するだけではなく、気や血をすり減らして「虚」をひき起こしたり(虚実挟雑)、もともと虚弱で気血の産生が低い人が心配ごとや悲しみ、恐怖や驚きといった、陰性の刺激を心に受けて起こります(虚)。心失所養とは、こころを元気にするエネルギーや栄養が不足したことを指します。