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高血圧と漢方薬

陰と陽のアンバランス

「高血圧症」は活動エネルギーと陰液のアンバランスで起こる
 環境が悪化する中で繰り返してかぜなどの病気を患ったり、喜びや悲しみ、驚きや怒りといった心の動きや、乱れた食生活、過度の性生活といった、ある程度避けられない不節制が続くと、そのしわ寄せが活動エネルギーと陰液のアンバランスとなって現れ、少しずつからだをむしばんでいきます。特に40歳ころになると、アンバランスがはっきりとしてきます。
 基本物質どうしのアンバランスが内臓で起こると、内臓の働きが悪くなります。基本物質のうち、陰液が不足し、そのためからだを温める活動エネルギーの働きが相対的に高まり進みすぎた状態のひとつが「高血圧症」です。多くの高血圧症は、陰液の不足による活動エネルギーの働きの異常な高まりが基礎になって起こります。

血圧が上がるのは「血液を調節する内臓」の問題

 内臓は生命活動の中心で、互いに深く結びついています。ですから、高血圧症にはすべての内臓がかかわっているといえますが、中心となるのは、血液を貯え、血液の循環量を調節している「肝」です。
 肝の活動エネルギーと陰液を保障する関係にある「腎」の機能低下が肝に影響を及ぼすこともありますし、そのほかの内臓の問題が肝に影響することもあります。しかし、どのような経過をたどっても、最終的には、肝を構成する活動エネルギーと陰液のアンバランスが起こってはじめて、高血圧症が起こると考えられます。特に肝のアンバランスは、まず陰液の不足が起こり、そのため活動エネルギーが相対的に余って起こることが多い、という特徴があります。

活動エネルギーが異常に高ぶり進む場合

 激しく怒るといった、心の異常な急変や、生活環境の激変などが引き金になると、たとえ陰液が正常でも、からだの機能を調整する肝の働きが異常に高ぶり進むため、炎が上に突き上げるような、激しい急性の熱症状が起こります(肝火上炎)。
 頭がふらついてクルクルまわる、顔面の紅潮、目の充血、口が苦い、頭が割れるように痛んだり脹るというように、からだの上部、特に頭と顔に症状が集中します。ひどい場合には、突然意識を失って倒れることもある、危険な状態です。脈は、弦をピンと張ったようになって柔軟性を失い、脈拍数が多くなります。舌は熱のために先端や辺縁が紅くなり、苔は乾燥して黄色くなります。
 このような症状に便秘や下痢、尿の色が濃い、頻尿、少量の尿、排尿痛、悪臭のある帯下、不正出血といった、からだ下部の熱症状をともなうときには、肝の火を消し、下半身の熱を追い出す「竜胆瀉肝湯」を使うといいでしょう。
 このようなタイプは急性の高血圧症にあたります。この段階を越えると、やがて正常な機能を失った活動エネルギーが火に変化し、絶えず陰液を消耗します。そのため、相対的に余った活動エネルギーを抑えることがいっそうできなくなり、肝だけでなく腎の陰精をも消耗して(陰虚陽亢)、慢性的な高血圧症になります。高血圧症はこのケースで起こることが最も多いと考えられます。