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中医学からみた腹痛

下腹部両側が冷えて痛む時は、冷えを除き血をめぐらせる治療が効果的

血が不足気味の人は、からだが冷えると、気や血のめぐりが悪くなり、下腹部の両側、特に左側がひきつるように強く痛みます。

栄養状態が悪く、潤いが不足しがちな人に多く、女性によくみられる腹痛です。
こうした「寒滞肝脈」の腹痛は、冷えるほど痛みが強くなり、陰のうが縮んだり外陰部に痛みが走り、寒がる・手足の冷え・顔が青白い・舌につるつるした白い苔がつく・非常に細いが力のある脈あるいは弦を張ったような遅い脈をふれる、といった症状をともないます。

 治療は、冷えを除いて気や血のめぐりをよくして痛みを止める「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」などで行います。

成人に多いストレス性の腹痛は気の流れを回復して治す

仕事や勉強などで緊張したりストレスを受けると、からだの活動を調節する「肝」の働きが滞るため、胸の両脇やは下腹部の両側を中心に、脹った痛みがおこります。

 この「肝気鬱滞」の腹痛は、痛みが移動し、ゲップやおならが出ると軽くなります。イライラ・憂鬱・食欲不振・舌に薄く白い苔がつく・弦を張ったような滑らかな脈などの症状をともないます。
 治療は、気の流れよくして肝の働きを回復し、痛みを止める「柴胡桂枝湯」や「逍遥散」などで行うといいでしょう。

元気がない人の腹痛は胃腸の働きを高めて治す

もともと胃腸が弱かったり、病気や老化などが原因で脾胃の消化吸収力がおとろえると、へそのまわりがしくしく痛みます。

 この「脾胃気虚」の腹痛は、下痢・食欲不振・息切れ・話すのがおっくうで無口になる・疲れやすい・からだがだるい・手足の冷え・顔色が悪い・舌の色が淡く白い苔がつく・脈に力がないなどの症状をともないます。

 脾胃の働きを回復し元気をつける「参苓白朮散」や「六君子湯」などで治療します。

 また、下腹部が落ちるように感じたり、慢性の下痢・頭のふらつき・脱肛・子宮脱などの「脾気虚」の症状をともなうときは、脾胃の働きを回復して元気をつけ、気を全身にめぐらせる「補中益気湯」が効果的です。

子供に多い腹痛の治療は胃腸の働きを高めながらストレスを除くのがポイント

脾胃は、肝の調節をうけながら消化吸収を行っています。しかし、ふだんから胃腸が弱い人は、肝の正常な働きでさえ負担となるため、脾胃の働きが滞って、腹痛がおこります。急にへそのまわりが痛いといって泣く子どもの腹痛の多くは、こうしておこります。 

このような「脾虚肝乗」の腹痛では、食事中に痛み、食欲不振・元気がない・疲れやすい・舌が柔らかく淡紅色になる・弦を張ったような脈で強く押さえると力がなくなるとなどの症状をともないます。 

治療は、脾胃の働きを高めながら肝の働きをやわらげる「小建中湯」や「当帰芍薬散」「芍薬甘草湯」、「逍遥散」のほか、「六君子湯」と「柴胡桂枝湯」を合わせたものなどで行います。「補中益気湯」もいいでしょう。

お年寄りに多い腹痛はからだを温め胃腸の働きを高めて治す

老化や慢性病などが原因で脾胃の働きのおとろえた状態が長びくと、全身を温める「腎」の働きもおとろえます。体内が冷えて、気や血の流れが悪くなるので、へそのまわりを中心に、しくしくした痛みと脹りが続きます。

 このような「脾腎陽虚」の腹痛は、温めたりさすると痛みがやわらぎ、疲れやすい・倦怠感・寒がる・手足の冷え・下痢気味・舌が淡白色で薄く白い苔がつく・弱く遅い脈などの症状をともなます。

治療は、脾胃の働きを補って元気をつけるとともに、全身を温めて痛みを止める「十全大補湯」や「鹿茸大補湯」などで行います。

強い冷えをともなう腹痛はからだを温めて治します。

 からだの冷えやすい人が、大きな病気をわずらったり年をとると、体内で生まれた冷えや、有害な冷たい水分によって気や血の流れが悪くなり、腹痛がおこります。

 このような「肝腎虚寒」の腹痛のうち、主に腎のおとろえが原因でおこる慢性の腹痛は、下腹部の中央が痛みます。

 下腹部が真夏でも氷のように冷たく感じられ、寒がる・手足の冷え・唇の色が悪い・尿が透明で量が多く切れにくい・舌が淡い色になって水分の多い白い苔がつく弱い脈あるいは大きく浮いて力のない脈(冷たい水分が停滞しているときは、弦を張ったような脈)、といった症状をともないます。

 治療は、腎の働きを高めからだを温める「八味地黄丸」や「牛車腎気丸」に「人参湯」を合わせたもので行います。
 肝の働きがおとろえて冷えが強くなると、下腹部の両側、特に左側がくり返し痛みます。

 さすったり、押さえると痛みがやわらぎ、嘔吐・水様便・だるくて力が入らない・寒がる・手足の冷え・舌が淡い色になる・細い弦を張ったような脈などの症状をともないます。

 この場合は、脾胃や肝を温めて冷えを除き、働きを高めて痛みを止める「呉茱萸湯」を使うといいでしょう。

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