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胃腸病と漢方

生薬配合の胃腸薬も病気に合わなければ効果がない

胃腸病の原因はさまざまですが、急性の場合は、本人にも原因が分かっていることが少なくありません。その為ほとんどの人は、よほど症状が激しくない限り、病院には行かずに市販の胃腸薬を服んですませているようです。

 しかし、せっかくの薬も効かなければ意味がありません。最近は、生薬が含まれたドリンク剤や粉末に人気があるようですが、漢方薬の場合、同じ胃腸病でも原因や体の状態によって処方が異なるため、一般の「漢方胃腸薬」では治らない場合もあるのです

胃腸病のメカニズム

中医学では、胃腸病が起こるメカニズムを次のように考えています。
 食べ物を受け入れ、利用して、残ったものを排出するという作用のうち、どこかが滞ると胃腸病の症状が現れます。食べ物の受け入れと排出を行うのは胃と腸、利用するのは脾です。
 「脾」とは、現代医学的には、膵臓・肝臓・胆嚢・小腸をさし、これらが協調することによって、はじめて食べ物の栄養をうまく吸収することができます。例えば、タンパク質をアミノ酸に、脂肪を脂肪酸に、炭水化物を糖に変えるというように、食べ物を消化して微細なものに変化させ吸収する作業「運化」を行うのが脾の働きなのです。

症状が出るメカニズム

臓腑の働きには、それぞれ方向性がります。肺や心のように体の上部にある臓腑は下におりる性質を持っており、肝や腎などの下部にあるものは上に昇る性質があります。中心にある脾胃は上下両方に向かいます。 脾胃を分けて考えると、脾は上に、胃は下に向かう性質があるということになります。この運動形態に逆らって、胃の働きの方向が上に向かってしまうと嘔吐やつかえという症状が現れ、逆に補の働きが下に向かってしまうと下痢という症状が出ます。

 同じくゲップのように上の方に症状が現れるのは、胃の働きが衰えたり停滞した証拠ですし、ガスが多くなるのは脾が消化不良を起こした証拠です。しかしゲップの多い人はガスも多いということからわかるように、脾胃どちらかの機能が停滞すれば、もう一方も影響を受けることになります。

ストレスと胃腸病の関係

急性の胃腸病のにもっとも多いのは、食べ過ぎや飲みすぎ、二日酔いによるものです。この場合、もともと胃腸が丈夫な人なら、嘔吐や下痢を起こしても消化のよいものを食べるようにしていれば、そのうちに治ってしまいます。ところが、もともと胃腸が弱かったり、調子を崩しているにもかかわらず暴飲暴食や不摂生を続けると、症状が慢性化してしまうことがあります。

また、腹が立ってものが食べられなくなったり、遠足の前の日に子供が食欲をなくしてしまう事からもわかるように、消化器の働きは喜怒哀楽に大きく左右されます。中医学では、精神・情緒をつかさどるのは、「肝」と考えています。

「肝」といっても肝臓をさすわけでなく、自律神経系・ホルモン系・内分泌系・栄養代謝系・胆汁の分泌・肝臓の機能の一部・女性の生理機能と大変幅広い働きを含んでいます。肝の機能停滞は、脾胃に大きな影響を与えます。神経性胃炎、ストレスによる胃弱・胃潰瘍・過敏性腸炎などは、すべて肝が関係して起こる病気です。

中医学診断基準

中医学では、「通じざればすなわち痛む」といって、体中をかけめっぐている体液(「気」「血」)が、何らかの原因で停滞すると痛みが生じると考えています。通じさせる役目を持っているのは肝です。その為、心配事や悩みごとがあると胃がシクシクと痛んだり張ったりするわけです。
 痛みは、病気のタイプや進行状況を知るための基準のひとつです。
診断の際には、まず痛み方が
①「緩やか」か「急かか」、
②「寒い」症状か「熱い」症状か、
③空腹時に痛み、張りなどが無い「虚タイプ」の痛みか、食後に痛み  部位の決まった「実タイプ」の痛みかといった性質をみきわめます。そして、へその回りが痛むときは、胃が、横腹から下腹にかけて痛む時は肝が関係していると考えます。