戻る

Index

 おもしろい中医学の話

中高年のトイレの悩み

      最近中高年の方からの漢方相談が増えております。その中での質問にお答えした回答です。

50歳を過ぎてから、おしっこが若いときのように勢いよく出なくなりました。しかも、尿の
キレが悪くトイレから出たあとに、何となく残尿感を感じてしまいます。ここ2〜3年は、下半身に冷えを感じるようになり、それとともに、夜、就寝してから何度もトイレに超きるようになりました。
 一方、同い年の妻は、このところ目が疲れるようになり、「新聞や雑誌の文字がかすんで、読みづらくなった」と嘆いています。妻は少しのぼせ気味で、身体は丈夫な方ですが、軽い尿もれがあるようです。知人から鹿茸大補湯という漢方薬がいい、とすすめらました。この機会に夫婦で飲んでみようと思っているのですが。

 

 ご主人や奥様が悩んでいる「トイレの悩み」や「目のかすみ」など、中高年になると現われる症状を漢方では「腎虚」と呼んでいます。漢方でいう腎とは、腎臓だけではなく、副腎、生殖器、内分泌系まで含めた総称で、「成長から老化」という人間の一生をコントロールする源と考えられています。


 このエネルギーの源である腎の働きが悪くなると、おしっこのキレや勢いが悪くなり残尿感がつきまとう、夜中トイレに起きる、目が疲れやすくなり小さな文字が読みづらくなる、下半身が冷える、腰や下肢が痛む、疲れやすくなl)腰から下に脱力感を覚える、といった症状が現われます。

腎虚には大きく2つのタイプがあります。

  1. 身体全体のエネルギーが不足する「腎陽虚」型。エネルギーが不足すると温める力が弱くなるので、冷えを訴えます。そのため水の代謝が悪くなり尿の異常が現われるようになりますご主人の症状はこのケースと考えられます。トイレの異常は最も代表的な腎虚の症状です。腎虚になると、なぜ、夜中トイレに起きるようになるのでしょうか。
     昼は定期的に尿意を催しますが、夜寝ている時には、尿の生成を「抗利尿ホルモン」によって抑え、尿意を催さないようになっています。尿の生成にはホルモンが関係しており、眠る必要があるときには利尿を抑えようとするわけです。しかし、腎虚になると全身のホルモン活性が低下するだけでなく、抗利尿ホルモンの活性が落ち、夜中トイレに起きるようになるのです。尿をコントロールするホルモンバランスが乱れているので、昼間は頻尿傾向になります。このようなホルモンの異常を漢方では腎の病態ととらえています。
     
     こうした症状に最も適した漢方薬が「鹿茸大補湯」です。優れた補腎効果で頻尿や排尿困難を改善。おしっこの症状だけではなく、冷えや疲れ、下半身の脱力感といった症状にも効果的です。

  2.  腎虚の2つめのタイプは、栄養が不足する「腎陰虚」です。

    腎の栄養が不足すると、のぼせやほてり、熱感が現われるようになり、やがて目にも栄養が行かなくなりま・れそのため、目が乾燥しやすくなり、疲れ目、かすみ目などの症状を引き起こします。奥様の症状はこのケースと言えそうです。

     治療薬には、目に栄養を送り、見る働きを正常化する「明日作用」に優れた「杞菊地黄丸」を用います。六味地黄丸をベースに、クコ子と菊花という生薬を加えた漢方薬です。
     どちらのタイプかを判断する際に目安になるのは、「身体の冷え」があるかどうかです。冷えがある方には鹿茸大補湯を、ない場合には杞菊地黄丸をおすすめします。